社外取締役からのメッセージ

写真:社外取締役の集合写真
2025年7月

2024年度の取締役会等における議論

中長期的な企業価値の創造に向けて
株主目線も意識しつつあらゆる視点から議論を深め、
的確かつ着実な戦略遂行を後押ししていきます

写真:取締役 (社外) 真鍋 靖

真鍋 靖取締役(社外)
元 株式会社日立製作所 執行役常務
ニチアス株式会社 社外取締役

写真:取締役(社外) 栗原 和枝

栗原 和枝取締役(社外)
浜松ホトニクス株式会社 社外取締役
SMILEco計測株式会社 取締役
東北大学 名誉教授
東北大学未来科学技術共同研究センター シニアリサーチフェロー

2024年度の取締役会で、最も時間をかけて話し合われた議題は何でしたか。

真鍋:新たにスタートした中期経営計画「Grow UP2026」です。各施策の妥当性や進捗状況のチェックなどに多くの時間を割いています。まず「事業ポートフォリオの強靭化」は、収益構造を安定化させ、持続的により一層成長できる事業基盤を構築していくために掲げている目標です。その布石として前中計期間から大型投資をしてきたオランダのMXDA生産設備は、建設業界の人手不足などの影響でスケジュールが遅延し、必ずしも全てが順調とはいえない状況にあります。重点管理事業であるポリカーボネートやシートフィルムの事業再構築に関しても、長い期間にわたって議論を続けています。一方でCarbopath™をはじめ、イノベーション領域に関する体制強化などについても、十分な時間をかけています。

栗原:おっしゃるとおり、気候変動問題の解決に資する研究開発活動と製品群については、価値創造の観点からの評価や将来性など、多面的な質疑が交わされました。そもそも当社グループは社名に「ガス」が付く、まさに天然ガス化学のパイオニアであり、触媒開発やプラント運用など、技術・ノウハウの蓄積があります。ただし、カーボンニュートラル事業として社会実装するには、幅広いステークホルダーとの連携が必須です。その際、外部環境の変化に合わせてタイミングを調整することは、プロジェクトの成功に不可欠です。その一例が、海外の合弁会社と当社が豪州で検討してきた、グリーン水素・CO₂を使用した環境循環型メタノール事業です。グリーン水素の価格がまだなかなか下がらず、建設コストも高騰しており、現段階では経済合理性が適わないことから、取締役会では検討を一旦収束させたわけです。

真鍋:環境問題の解決と産業成長の両立が可能なCO₂原料の化学品には、大きなポテンシャルがあります。現在、Carbopath™は複数のプロジェクトが進行していますが、他社に先駆けて「環境循環型プラットフォームならMGC」と言われるようなポジションを押さえることが重要だと考えています。経営陣の判断を客観的に評価しながら、企業価値の向上に資する適切なリスクテイクを後押ししていきたいですね。

栗原:CCSなどカーボンニュートラル事業は国や地域から期待の声も聞かれますし、将来的に大きく成長する可能性が高いものと捉えています。新しい分野で独自技術を確立・展開していくためにも、幅広い議論を尽くすことを心がけています。

2025年4月に就任した伊佐早新社長には、どのような期待がありますか。

栗原:ビジョン実現の軸となるU&Pを突き詰めていくための、まさに象徴的な人事であり、当社の姿勢を広く社内外に伝達する上で、時宜を得たものだと受け止めています。直近の2年は、研究統括としてグループ全体を俯瞰し、R&Dの方向性を先導されてきた人材だと理解しています。ですので、グループ各社・各部門にあるユニークな技術に横串を通しつつ、過去になかった新たな事業展開を期待しています。

真鍋:私も、栗原さんと同様に「研究開発型企業」を追求していくことに期待を寄せています。更に言えば、中計の柱である「事業ポートフォリオの強靭化」と「サステナビリティ経営の推進」を牽引し、各々の施策を着実に推進していただくことに期待しています。

将来の経営者として活躍できる人材の育成については、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

真鍋:当社には優れた人材育成プログラムがあり、KEY人材が継続的に輩出される仕組みと環境が整っています。ただし技術系人材に関しては、川上と川下の領域で特性がかなり異なるのは存じていますが、本格的な経営人材を育てるには、2つの領域をまたいだダイナミックなキャリアパスがもっとあっても良いのではないかと思っています。エンジニアリング分野ではすでにそのような人材が育ちつつあるようですが、例えば川下をずっと手掛けてきた人が、川上の事業部長などを経験してから経営層に上がっていくような道筋です。

栗原:私は、サクセッションプランとして明文化こそされていないものの、例えばキャリア形成の過程で海外子会社のトップに就いてもらうなど、将来の経営幹部にふさわしいリーダーシップや危機対応力を養成するような、複数の道筋が確立されている会社だと捉えています。

真鍋:さらにサステナブルな成長を促すために、2025年6月に取締役報酬制度(社外取締役を除く)の一部を改定しました。現在の取締役報酬制度では約3割が業績連動です。この業績連動部分に新たに複数のESG項目を追加しました。Eは「GHG排出量削減率」、Sは「働きがいを感じる従業員割合」、Gは「コンプライアンス違反件数」といった項目をKPIとして組み入れました。もし結果が芳しくないようであれば、役員の評価が下がりますから、改善策を講じていくというPDCAサイクルがより加速するものと見ています。

栗原:ESG関連の取り組みは、必ずしも今の状況に問題があるというわけではないため、むしろ新たな報酬体系の運用によって、更に高いレベルを目指していく流れになっていくのではないかと見ています。

新任社外取締役メッセージ

佐藤 地取締役(社外)
元 ユネスコ日本政府代表部特命全権大使
国際連合大学 理事

写真:取締役(社外) 佐藤 地

「木を見て森も見る」という視点で、適切な監督・助言を行っていきます

私は当社グループを、非常に特色のある自社開発のテクノロジーを用いて、多種多様な分野で活躍している化学メーカーだと捉えています。需要家と対話しながら、絶えず新しいことに挑戦する先進性があり、社内の士気も総じて高いという印象を持っています。これらの特色・強みを活かした、気候変動課題やDX推進、「医・食」領域の進化などへの貢献がステークホルダーから期待されており、実際、これらの期待に応えるべく、多様なパートナーとともに、グローバルでの価値共創に取り組まれています。

私はこれまでに、外務省の対外スポークスパーソンである外務報道官、ユネスコ日本政府代表部大使、駐ハンガリー大使などを務めてきました。世界の情勢が流動的かつ不安定な中にあって、グローバルな舞台での経験・知見を活かして、当社グループの企業価値向上に貢献していく考えです。

これは私自身も普段から心掛けていることですが、「木を見て森も見る」という視点で、適切な監督・助言を行っていく所存です。「会社組織、人材、及び製品を取り巻く状況と、その趨勢を大局的に見定めながら、事に臨む」というニュアンスです。技術立社の風土を育みながら、将来の産業や暮らしのあり方を展望すると同時に、世界のお客様との丁寧な対話を重ねて、オリジナルの技術を継続的に高めていくことが、ますます重要になってきていると考えています。

新任社外取締役メッセージ

真鍋 美穂子取締役(社外)
元 ムーディーズ・ジャパン株式会社 取締役鳥居薬品株式会社 社外取締役(監査等委員)
財務コンサルタント(個人事業主)
MPower Partners Fund
サステナビリティ エキスパート

写真:取締役(社外) 真鍋 美穂子

PBR、ROEの改善に向けて、
海外の株主・機関投資家の皆様とのコミュニケーション強化を図りたい

私は長年にわたってグローバルな金融業界で、米国と日本のコーポレートファイナンス部門で、企業分析に携わってきました。1,000社を超える企業の事業計画や資本政策の評価・分析に関わった経験を活かして、当社での取締役会の審議に貢献したいと考えています。

当社グループを長期にわたって持続的な成長に導くために、他社に模倣されにくいU&P事業に経営資源を集中させる事業ポートフォリオの“強靭化”戦略は、極めて妥当だと思います。垂直統合されたビジネスモデル、数多くの製品が世界市場でトップシェアを獲得している事実、過去に新製品のイノベーションをいくつも起こしてきた実績など、すでに当社はとてもユニークな強みと存在感を持っています。こうした強みを継承しながらの、エッジの効いた新規事業の創造を期待しています。化学メーカーのビジネスモデルでは、実際に収益を上げるまでに、長年にわたる研究開発や設備建設が必要です。このインベストメント・サイクルの期間は、資金調達のために強固なB/S(貸借対照表)を維持しつつ、投資家に適正なリターンを提供するという、キャピタルアロケーションのバランス維持が大切になると考えています。

なお、現在のPBRやROEには改善の余地が大いにあると見ています。当社グループの成長力と将来価値が、株主・投資家の方々に正当に評価されるよう、業績と成長戦略の進捗状況を明確に結び付けた説明や、優先事項を反映した財務戦略や資本政策などをしっかり伝えていくことが重要です。私は米国でのキャリアが長く、特に海外機関投資家への対応は数多く経験してきていますので、彼らとの関係構築の面でも助言していきたいと考えています。