気候変動への対応(TCFD提言に基づく開示)

当社は、2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(以下、TCFD)の提言に賛同しました。

気候変動への対応は、持続可能な社会の実現のために、地球規模での取り組みが求められる大きな課題です。三菱ガス化学は、エネルギーと気候変動問題の解決を重要課題と認識し、気候変動の緩和と気候変動への適応の両面から課題解決に取り組んでいます。

具体的には、Scope1/2※1の温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を定め、着実な削減に取り組むとともに、Scope3※2については積極的な情報公開とサプライチェーンとの協働を推進しています。また、2050年の脱炭素社会に向けて、原料の炭素循環やエネルギー効率の向上・転換を進め、プロセスの技術革新やライフサイクル全体でのGHG排出量に配慮した設計・開発を推進し、事業を通じたエネルギー・気候変動問題解決に取り組んでいます。

当社は気温上昇を2℃以下に抑え込むべく、2021年3月に2050年にカーボンニュートラルを実現する新たな目標を発表しました。カーボンニュートラルを実現するエネルギーシステムの構築を促進し、カーボンニュートラル貢献製品の拡充を目指しています。

  • ※1 Scope1/2:Scope1は自社が直接排出したGHG排出量、Scope2は他社から購入したエネルギー(主に電力)の使用に伴う間接的GHG排出量。
  • ※2 Scope3:原材料調達・製造・物流・販売・廃棄などの組織活動に伴いサプライチェーン上で排出される間接的GHG排出量。

1. ガバナンス

当社は、気候変動リスクなどのサステナビリティ重要課題に対して、社長を議長とした取締役会メンバーで構成される「サステナビリティ推進会議」で審議・決定し、「サステナビリティ推進会議」にて審議する重要な事項については、取締役会で決議します。

サステナビリティ重要課題は、その諮問機関である「サステナビリティ推進委員会」で本社管理部門長が参画することにより十分な審議を行い、「サステナビリティ推進会議」へ上程します。

GHG排出削減長期目標については、中期経営計画に組み込み、経営が主導的に管理を実施します。

気候変動ガバナンス体制
図:気候変動ガバナンス体制。気候変動ガバナンス体制の詳細を示しています。

2. 戦略:気候変動によるリスク・機会への対応

2022年度シナリオ分析の前提

  • ターゲット:2030年、2050年
  • シナリオ:気温上昇
    脱炭素シナリオにおいて参照した主要な外部情報
    • -IEA WEO 2021 SDS:世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるため、段階的に排出量を低減させていく世界
    • -SSP1:低所得の国において急速に開発が進み、世界的にも各経済においても不平等が解消され、技術開発も急速に進展
      成り行きシナリオにおいて参照した主要な外部情報
    • -IEA WEO 2021 STEPS:各国が現時点で公表している計画に準じた排出経路により、平均気温の上昇が2100年頃に約2.6℃となる世界
    • -SSP2:国際的な協調性がなく、技術開発に対する投資が少なく、経済成長のスピードが遅いSSP3と脱炭素シナリオのSSP1との中間的な成長が想定される
  • 分析対象:光学材料、脱酸素剤
  • 既存の事業ポートフォリオに対するリスク/機会のインパクト(影響額)を定量評価し、対応戦略を立案
評価結果
  リスクと機会(リスク機会 主な対応
脱炭素シナリオにおけるリスク・機会
  • 成り行きシナリオに比べて高経済成長による高付加価値製品の需要増加
  • 電子機器の機能の高度化
  • 植物性原料を使用した代替肉など食文化が変化
  • 脱炭素などの厳しい規制
  • 高付加価値製品に対応した製品ラインナップの拡充
  • 研究開発の拡充、クロスバリュー・イノベーションの実践
  • 高屈折製品の開発による減量化
成り行きシナリオにおけるリスク・機会
  • 脱炭素シナリオに比べて人口の増加が顕著
  • 温暖化の進行により農地面積の減少・生産量の減少
  • 国際的な協調性がなく、技術開発が抑制され、脱炭素シナリオに比べて経済成長は低い
  • 化石原料価格の高騰
  • 新興国における市場開拓の加速
  • 食料の長期保存用途における市場開拓の加速
  • 研究開発の拡充、クロスバリュー・イノベーションの実践
  • 製品の小型化・減量化、環境対応原料の採用

3. リスク管理

当社は、環境・社会・ガバナンスに関する重要課題(マテリアリティ)を特定し、全社横断的なマテリアリティマネジメントを通じて、リスク管理を実施しています。マテリアリティの一つである「環境問題への積極的・能動的対応」は、ステークホルダーおよび自社の観点から重要度が極めて高い課題として特定し、企業の存続と活動に必須の要件として主体的に取り組む考えです。

また、気候変動リスクの定量的な把握を行うために、2021年4月よりインターナルカーボンプライシング制度を導入しました。CO2排出量の増減を伴う設備投資計画において、社内炭素価格(1万円/MT-CO2換算)を適用し換算した費用あるいは効果を投資判断における一助として運用し、CO2排出削減を推進し、低炭素社会構築に資する技術・製品の創出を促進します。

4. 指標と目標

三菱ガス化学は、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、GHG排出削減の長期目標を設定しています。目標達成に向け、GHG排出量およびGHG排出原単位をKPIに設定し、省エネ活動の推進、再生可能エネルギーの導入、環境循環型メタノール構想などの短・中・長期の時間軸での排出削減施策を進めていきます。

GHG排出削減長期目標

  • 2023年
    2013年度比28%削減

  • 2030年
    2013年度比36%削減

  • 2050年
    カーボンニュートラル達成

図とグラフ:主な削減策とCO2排出量。2013年から2050年の間の主なCO2削減策とCO2排出量の削減数値を示しています。