洋服の繊維も、燃料も―

メタノール(メチルアルコール)

生産能力

世界3位

時代を超えて人々の夢を叶える
万能選手

メタノール(メチルアルコール)は、世界中で需要が伸び続ける、生活や産業に欠かせない素材。アルコールランプを思い起こす方もいるかもしれませんが、工場でこそ本領を発揮する物質です。その用途は実に多種多様。多くの化学品の原料として、また近年ではエネルギー源などとして、時代の最先端で常に新たな役割を期待されながら、人々の夢を叶え、豊かな社会の実現を支えてきました。三菱ガス化学は、世界で唯一の“メタノールの総合メーカー”として、その需要を大きく支えています。

  • ※当社技術を用いた関係会社の総計

01繊維、塗料、医薬品・・・あれもこれも、メタノール生まれ

メタノールは主として天然ガスなどからつくられる物質で、アルコールの一種です。酢酸やホルマリン(ホルムアルデヒド)の原料となるほか、近年ではエチレンやプロピレンの原料としても使用されています。これらの物質を原料または中間素材として、多種多様な最終製品がつくられています。そのラインナップは実に幅広く、代表的なものだけでもプラスチックや合成繊維、接着剤、塗料、農薬、医薬品など、「これがない暮らしなんて想像もつかない!」というものばかり。それほど広く社会に溶け込んだ、現代生活に不可欠な素材なのです。

メタノールの用途

図:メタノールの用途

02世界で唯一の“メタノール総合メーカー”、三菱ガス化学

三菱ガス化学は1952年、日本で初めて天然ガスからメタノールを合成することに成功した企業です。当初は新潟県の自社プラントで天然ガスの採掘から誘導品の製造までを行っていましたが、やがて安価な原料調達とプラントの大規模化による競争力強化を目指して、1970年代にはメタノールの海外生産を検討。培ってきた製造技術や天然ガスの採掘技術なども活かして、グローバルなビジネスネットワークの構築に専念します。その結果、他社に先駆けて、世界各地で自社技術によってメタノールをつくり、自社専用船で消費地まで運搬、これをまた自社で消費して誘導品をつくり、販売するという一連の体制を確立しました。以来、“世界で唯一のメタノール総合メーカー”として、70年以上にわたり活躍しています。
こうした体制上の強みに加えて、生産力も世界トップクラス。現在では年間250万トンを取り扱っています。日本が年間に輸入するメタノールの実に60%は、三菱ガス化学が海外プラントで製造したものなのです。

  • ※誘導品:基礎原料から化学反応によって生成される物質(製品)のこと。メタノールの誘導品としては、酢酸、ホルマリンが代表的。
図:世界のメタノール事業拠点。アジア、中東、アメリカ

03災害対応、イベントで――安全・安心な“未来の電源”もメタノールが生み出す

近年、メタノールはエネルギー分野での消費が増えています。使われ方としては、燃料または燃料原料用途が多いのですが、三菱ガス化学ではメタノールを燃料電池の燃料としても使用しています。
商用電源が使えない場所・状況では、二次電池・太陽電池・エンジン発電機などが使われていますが、三菱ガス化学は「直接メタノール形燃料電池(DMFC)」という新しいソリューションを提供しています。
一般的な水素燃料電池は水素ガスを燃料としますが、DMFCはメタノールの水溶液(メタミックス)を用いるのが特徴。燃料がなくならない限り発電を続けることができ、また燃料が液体で扱いやすく、比較的安定した物質なので、貯蔵や輸送も容易というメリットがあります。軽量・コンパクトで安定性が高いことから、災害時の非常用電源(バックアップ電源)、遠隔地で用いる電源として活躍しています。またDMFCを用いたポータブル電源は、従来のガソリン発電機などと比べて静かで、一酸化炭素や窒素酸化物などの有害な排気ガスを出さないため、イベントや屋内施設での使用に向きます。屋外であれば、2~3メートルほどの距離があればほとんど騒音が聞こえず、燃料4リットルで8時間以上運転できます(200Wモデル)。「安全・安心」な未来社会の実現にも、メタノールが大いに活躍しています。

  • ※メタミックス:濃度54%のメタノール水溶液。

メタノールの用途

図:“未来の電源”のしくみと使用シーン

番外編“飲める”エタノール、“飲めない”メタノール

エタノール(エチルアルコール)とメタノール(メチルアルコール)――よく似た名前ですが、二つの物質の違いをご存知ですか?別名が示すとおり、これらの物質は、いずれもアルコールの仲間です。しかし、エタノールは穀物などのでんぷん質、果物などの糖質を発酵させてつくられるのに対し、メタノールは天然ガスや石炭、バイオマスなどからつくられるもの。分子構造が違うので、性質にも違いがあります。
一番の違いは、酒類の主成分として心地よい酔いをもたらすエタノールに対して、体内で毒性をあらわすメタノールは飲用厳禁であるということです。取り違えには、くれぐれもご注意を!

エタノールとメタノールの違い

図:エタノールとメタノールの違い