トップメッセージ

2050年の化学メーカーのあり方を見据えて、
新しい事業の創出と既存事業の再構築により
事業ポートフォリオを強靭化しながら、
グループ全体の収益性を高めていきます
2025年4月に代表取締役社長に就任しました。当社グループの未来を託され、ビジョンに掲げる「特色と存在感あるエクセレントカンパニー」を目指しながら、企業価値の向上に注力していく所存です。研究統括という立場だった私が社長に指名された背景には、激変する外部環境の中で、真に顧客志向の研究開発型企業への転換を図らなければ、グローバルで勝ち抜くことが難しくなるという危機意識もあったと考えています。もはや優れた製品を生み出すだけでは容易に売れる時代ではありません。顧客から選ばれるのを待つ受け身の姿勢から決別し、「顧客が欲しい素材・材料しか売れない」という原理原則に、改めて立ち返る時だとも言えます。
このような認識の下、顧客の真のニーズを正しく理解し、対話を重ねながら、新しい製品群を顧客とともにつくっていく「マーケットアウト」の考え方を、グループ全体に浸透させる必要があると考えています。私たちは今後、顧客課題にフォーカスして「点」をつなぎ合わせ、独創的なR&Dによって「面」に広げる、ソリューション志向のビジネス展開を加速していきます。当社グループの基軸はあくまで「化学」であり、「ものづくり」です。だからこそ、2050年の化学メーカーのあり方を見据えて、事業ポートフォリオや収益構造を変えていく必要があると考えています。
2024年5月に公表した中期経営計画「Grow UP 2026」では、前中期経営計画期間から実行しているUniqueness & Presence事業での大型成長投資の刈り取りに集中して取り組んでいます。特に、市場環境が激しく変化しているICT領域に対しては、顧客ニーズをより的確に把握する仕組みが必要です。タイムリーな設備投資を実行し、DXを活用した新規技術・製品開発と併せて、収益力を高めていきます。また、カーボンニュートラル関連の諸施策は、炭素循環社会の実現に大きく貢献できるものであり、今後も積極的に進めていく所存です。
一方で、事業性の乏しい製品群については、撤退・事業移管を引き続き断行していきます。黒字であっても利益率やROEが十分な水準に達していなければ、ベストオーナーの観点から事業継続する意義を再検討し、グループ全体での事業ポートフォリオ強靭化を進めていきます。また、当社が「2030年ありたい姿」に掲げた「ROE12%以上」という財務目標の達成は、既存事業のブラッシュアップ(カイゼン)だけでは難しい面があります。だからこそ、強い価格交渉力を保持できる新しい事業を創出し、収益性の低い事業との新陳代謝を促していかなければなりません。このためにはしがらみのない改革が必要であり、企業体力の低下を招きにくくするためにも、当然あってしかるべき事業ポートフォリオの必然的な循環だと捉えています。
真の研究開発型企業を志向しながら、新たな発想や顧客の悩みを汲み取れる感性を伸ばしていくためにも、中期経営計画において「人的資本経営の充実」を掲げています。DEIを推進して多様なものの見方ができる人材を育成し、U&Pの追求・発展につなげたいと考えています。若手研究員時代、私は花開く前の光学樹脂ポリマーの探索研究を一人で担当するなど、多くの厳しい局面に対峙してきましたが、MGC独自の「挑戦」や「自由闊達」といった社風が根付いていたからこそ、多くの壁を乗り越えることができました。こうした経験を活かして「失敗することは、さほど怖くない」と思えるくらい、様々な挑戦がより一層活発に行われる企業風土を磨き上げていきます。
株主および投資家の皆さまには、今後ともご支援・ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
2025年8月
代表取締役社長