財務経理担当役員メッセージ

印刷
文字サイズ
写真:北川 元康

筋肉質な事業構造の構築に軸足を置いた
財務・資本政策を追求し、
次期中期経営計画につなげていきます。

将来を見据えバランスを修正すべき時と認識

2025年4月に財務経理担当役員に就任した私は、持続的な企業価値の向上を実現していくために求められる、短期と長期、成長投資と株主還元といった一見相反する命題の両立を意識し、経営の「軸」を客観的な視点で把握し、バランスを適宜修正することを自らの使命と捉えてきました。現在の当社グループはまさに、バランスの修正が必要な局面にあると認識しています。

前中期経営計画から現中期経営計画「Grow UP 2026」の期間では、規模の拡大に重心を置き、成長ドライバーであるICT3事業をはじめとする「Uniqueness & Presence」事業を中心に積極的な成長投資を実施しました。その結果、投資キャッシュ・フローが営業キャッシュ・フロー を上回る状態がしばらく続きました。そうした先行的な成長投資は、顧客からの要請に基づくものであり、高い確度で回収できることを前提として実施してきました。しかし、2025年度、想定を超えた市場環境の変化を受け、オランダで進めていたMXDA製造設備の建設工事を中止し、プロジェクト資産の全額につき減損損失を計上するに至りました。その結果、当社としては13年ぶりに当期純損失を計上しました。

「Grow UP 2026」最終年度となる2026年度についても、目標達成に向けたハードルは高い状況にあります。その要因を総括すると、拡大する需要に応えるため投資のタイミングが集中したこと、投資キャッシュ・フローは当初の計画値を下回っているものの、それ以上に営業キャッシュ・フローが想定を大きく下回って推移していることが挙げられます。2025年度にはようやく、営業キャッシュ・フローが投資キャッシュ・フローを上回る状態に転じましたが、2026年度からは投資成果の刈り取りにより一層注力し、筋肉質な事業構造への転換を目指していきます。投資回収ができず減損損失計上に至った原因を徹底究明した上で、次期中期経営計画に向けて、同様の事象を決して繰り返さないよう対策も練り直しています。一方、投資規律の強化も重要ですが、高いハードルレートの設定のみでは投資意欲が減退する恐れがあります。持続的な企業価値向上のために投資は欠かせないというスタンスに変わりはなく、今回の反省を踏まえ、きめ細かく状況を把握し、軌道修正の要否を早期に判断できる体制をコーポレート主導で構築しています。

筋肉質な財務体質と資本効率の改善を両立

当期純損失を計上したとはいえ、自己資本比率や有利子負債、D/Eレシオは計画内でコントロールできており、一定の財務健全性は維持されています。2026年度も、政策保有株式や非事業用資産の売却ならびに、現預金の適正水準でのコントロール等により、アセットライト化を継続して進めていきます。また、当社はグループファイナンス等が有効に機能しており、現預金残高を恒常的に低水準に抑制することができています。こうした強みを活かしたキャッシュマネジメントで、効率性を最大化していきます。現中期経営計画で定めた、D/Eレシオの上限を0.55倍、下限を0.30倍とし、資本効率向上と財務健全性の両立を図るというバランスシート・コントロールも継続します。格付投資情報センター(R&I)のA+の長期格付を維持しており、借り入れ余力もあることから、投資の際には財務レバレッジも駆使しながら資本コストの低減を図る方針です。また、金利が上昇局面にある現在は、資金調達の多様化が重要であると捉えています。短期と長期のバランス等を意識しながら、資金調達コストの低減に努めていきます。

こうした多様な資金調達ができる基盤は、当社の先人たちが長年築き上げてきた信用であると認識しており、財務健全性を毀損しない限り、2026年度も累進配当を継続し減配はしない考えです。DOEは3.0%を、総還元性向は50%を目標値に設定し、状況次第では機動的な自己株式取得も検討するなど、企業価値の向上を図っていきます。2026年度は 、これまでお話ししてきた方針を着実に遂行することで、筋肉質な財務体質と資本効率の改善を両立し、次の中期経営計画につなげていきたいと考えています。

資本コストや株価を意識した経営の推進

事業ポートフォリオ強靭化に向けた取り組み

  • ROIC・ROE向上策の推進
    • ICT3事業を中心としたU&P事業への経営資源の重点配分
    • 成長投資の刈り取り早期化
    • 高シェアを活かした価格転嫁の徹底
    • 重点管理事業の再構築の加速
    • コスト削減の再徹底(重点管理事業に限定せず、グループを挙げて検討)
  • 研究開発型企業としての価値創造の加速
    • 戦略研究領域(モビリティ、ICT、医・食)を中心に新規・次世代事業の育成・事業化を加速
  • 戦略的M&Aの積極化

資本コスト低減に向けた取り組み

  • 財務レバレッジの活用
  • 業績ボラティリティの低減(U&P事業への集中等)
  • アセットライト化の推進
  • サステナビリティ経営の推進
  • 投資家・アナリストとの対話強化 など

積極的な株主還元に向けた取り組み(現中計期間中)

  • 「総還元性向50%」を中期的な目安に
  • 「累進配当方針」に沿った配当政策
  • DOE 3.0%を目標値に など

最適資本構成に向けた財務レバレッジの活用

  • ROIC経営強化に向け、D/Eレシオによりバランスシートをコントロール。資本効率性と財務健全性の両立を念頭に、現中期経営計画期間中は0.30~0.55倍程度の範囲を想定
  • 財務健全性に留意しつつ、資本効率向上のため、成長投資における資金調達として負債を活用。その結果、2025年度末のD/Eレシオは0.35倍に上昇
  • 引き続き、財務規律を維持しつつ、積極的な負債活用を継続

D/Eレシオの推移(倍)

グラフ:D/Eレシオの推移

結果を出して信用を維持・強化しつつ、将来的な成長性を訴求

顧客の課題に対し、独自性の高い高付加価値な製品でお応えし、顧客やその先の社会と価値を共有していくのが 当社のビジネスモデルです。時代の移り変わりとともに向き合う課題も変化し、同じ製品であっても用途を次々に広げながら、幅広い領域でのイノベーションに貢献し、様々な産業を下支えする役割を果たし続けていると自負しています。一方、そうしたビジネスモデルの下では、最終的にどの市場や用途において当社の製品を活用するかを判断するのは、当社ではなく顧客であることから、当社の事業ポートフォリオは多様化せざるを得ない宿命があります。こうした持続的な企業価値向上の進め方をご理解いただくためには、各事業が着実に業績として結果を示しながら、並行して将来的な成長性の訴求にも力を注いでいかねばなりません。財務戦略の基盤となる信用の維持・強化に向けて、 2025年度の教訓を活かしながら、より一層スピード感を持って構造改革を進めていきます。

積極的な株主還元の継続実施

  • 「 Grow UP 2026」での還元方針は、累進配当方針※1、総還元性向50%目安※2、DOE※3(自己資本配当率)目標値 3.0%
  • 2025年度は当期純損失となったが、引き続き財務健全性は確保。2025年度の年間配当は、前年度比5円増配の100円に
  • 現中計最終年度の2026年度も、上記方針に基づき年間10円の増配を予定。今後も積極的に株主還元に取り組んでいく
グラフ:政積極的な株主還元の継続実施
  • ※1 現中期経営計画3年間の期間を対象。原則、減配を実施せず、配当維持または増配を行う
  • ※2 中期的な目安を40%から50%に引き上げ
  • ※3 年度 2.83%、2025年度 2.96%、2026年度(予想)3.00%超
  • ※4 記念配当10円を含む

株主及び投資家の皆様には、今後ともご支援・ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

2026年9月
取締役 専務執行役員
財務経理担当、CSR・IR担当、総務人事管掌、内部統制リスク管理担当
北川 元康