技術系座談会 〜平塚研究所〜
MGCの独創性は
どこからやって来るのか
どこからやって来るのか
常に時代と向き合いながら
MGCが培ってきた豊富な技術。
その技術に独創性が宿るのはなぜか。
理由を突きとめるのは社員でも難しい。
今回、入社5年未満の若手4名と研究所長が
立場を超え、率直なディスカッションに挑戦。
設立50周年を迎えたMGCの独創性のコアに迫る。
MGCが培ってきた豊富な技術。
その技術に独創性が宿るのはなぜか。
理由を突きとめるのは社員でも難しい。
今回、入社5年未満の若手4名と研究所長が
立場を超え、率直なディスカッションに挑戦。
設立50周年を迎えたMGCの独創性のコアに迫る。
MEMBER
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K.N.平塚研究所
第一研究グループガスバリア性接着剤であるマクシーブの研究開発を担当。昨今リサイクルの観点から注目を浴びるモノマテリアル包材への適用に向けた開発のほか、顧客対応を通してMGCアミン拡販に貢献している。 -
A.A.平塚研究所
第一研究グループ多層ボトル向けのMXナイロン、および自動車・電気電子部品などに使われるLEXTERの研究開発を担当。添加剤処方の開発検討を中心に、顧客のテクニカルサポートも担当。 -
H.T.平塚研究所
第二研究グループスマートフォンの液晶ディスプレイなどTFT基板に使われる、高耐熱ポリイミド樹脂「ネオプリム」の研究開発を担当。新規グレードの開発や顧客のテクニカルサポートを主な業務としている。 -
Y.H.平塚研究所
第三研究グループ先端半導体向け材料を担当。分子の設計、合成手法の検討から実施、評価を経て顧客に紹介。良い結果が得られた材料に関して実機製造可能なスキームを作成するなど、量産化のプロセスを検討する。 -
N.M.平塚研究所
所長
*記事内容および社員の所属は取材当時のものです。
-
だから私たちはMGCの一員になった。
- N.M.
- まず、みんながMGCに入社した理由を教えてもらえるかな?
- Y.H.
- 私は就活で会社説明会に参加したことがきっかけです。研究の方針について、先輩社員から「上司と何時間も話して決めている」と聞きました。研究を成功させる上で、方針を決めることはとても大事じゃないですか。その際に自分の意見を聞いてもらえるんだ、本当に研究を大切している会社なんだとわかり、入社を決めたんです。
- H.T.
- 私は採用面接で自分の研究についてたくさん質問されたのが嬉しかったです。90分間の面接のほとんどをディスカッションに費やす会社は、MGC以外にはありませんでした。きっと研究者として力をつけられると感じたことが入社の決め手です。
- N.M.
- 入社前の研究内容はぜひ知っておきたいからね。入社後に新卒の「修士論文発表会」があるでしょう?あれは研究所で任せたい具体的なテーマを決めるためのリサーチでもあるんだ。
- A.A.
- 私の場合は、大学の研究室でMGCに入社した先輩に話を聞き、MGCの存在を知りました。必ずしもずっと研究職ではなく、営業部門に異動した方もいる。そんな話を先輩から聞き、幅広い仕事に携わるチャンスがあるMGCに魅力を感じて入社しました。
- K.N.
- 私は化学系の学部出身ですが、経営にも興味を持っていたので、大学院では技術経営を学びました。そして「将来はマネジメントに携わりたい」と考えるようになったのです。MGCではジョブローテーションで、営業やマーケティングを経験するチャンスがあると知り、入社を決めました。
- N.M.
- A.A.さんとK.N.さんは、入社後は本社で営業実習を受けていたね。研究職の新卒にも製品の「出口」、つまり顧客への営業を知ってもらった上で、研究に活かしてもらおうという考えでおこなっている。実際2人とも、営業研修で担当した製品を研究所でも担当してもらっているよね。
-
研究を仕事にする、ということ。
- N.M.
- 皆さんは学んできたバックグラウンドも現在のテーマも違うので、大切にしていることもそれぞれ違ってくると思うけど、どうだろう?
- H.T.
- 大学院の研究室にいた頃は「数撃ちゃ当たる」で実験をくり返し、当たったものだけを論文に書いていました。でも研究を仕事にしている今、闇雲な実験はダメです。限られた予算の範囲内で最大限の結果を導き出すために、計算や物性予測をして、まずテーマリーダーにプレゼン。承認されたら実験をおこなうようにしています。
- Y.H.
- プレゼンの合格率はどう?
- H.T.
- …50%くらい。
- N.M.
- (笑)リーダーによって厳しさは異なるけど、H.T.さんの基本スタンスは正しいな。
- A.A.
- 学生時代との比較で言うと、私はモチベーションの下げ幅を少なくすることを大切にしています。学生の頃は実験に失敗すると「今日はもうやめとこう」となりがちですが、仕事ではそうはいきません。たとえ失敗しても、それは成功に近づく一歩と捉えてモチベーションをキープしています。
- Y.H.
- 私はMECE(ミーシー:Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略。モレなく、ダブりなくの意)を意識しています。私のチームは新規分野を任されていて、早期の収益化を期待されています。顧客にもスケジュール面で迷惑をかけないよう、チーム内で課題の見える化・優先順位付け・共有を徹底する必要がありますから。
- N.M.
- 時代のニーズが変われば、研究を進めていたテーマを取り下げざるを得ない場合もある。スピードは大事だよね。
- K.N.
- すごくわかります。私のテーマも時代のニーズと早く噛み合うように、スピード感を持って成果を出すことにこだわっています。それから、営業研修時代に当時の上司から言われた「真摯に取り組んでいれば支援は集まる」という言葉も忘れられません。その上司は今でも私が一番尊敬している方で、マクシーブ(製品名)の生みの親なんです。
- N.M.
- 良いアドバイスをもらったね。
-
MGCの独自技術はどのように生まれるか。
- N.M.
- 今マクシーブの生みの親が話題に出たけど、MGCの独自技術はなぜ、どのように生まれると皆さんは考えているかな?
- K.N.
- 平塚研究所の場合は、トリガー活動が重要だと思います。
- Y.H.
- 全員でアイデアを発表し合ってアドバイスを受け、面白そうなものを実験で深掘りするための「アイデア創出活動」だね。
- K.N.
- 私は平塚研究所に異動して初めて参加した際、あえて専門外の“飛び地”をテーマに、数十年先を見据えたアイテムやサービスを自分なりに発表しました。「どうやって進めればいい!?」と考えるプロセスでたくさんの方とつながり、情報が集まってきました。その積み重ねが独自技術を生み出すように感じています。
- A.A.
- MGCは本当にフラットですよね。グループリーダーもテーマリーダーも私も、同じ島で意見を交換し合います。営業研修時代も、別部署の役職者の方と気軽に話せましたし。部署内外の敷居の低さが独自技術を生み出す土壌になっていると、私は思います。
- H.T.
- K.N.さんが専門外のテーマを扱った話をしたけど、私はそもそも今研究しているポリイミドというかポリマー自体が専門外でした。大学院時代は理論系が中心でしたから。ポリマー初心者の私が出す意見は、突拍子のない内容かもしれない。でも先輩や上司は既存の考え方にとらわれず、しっかり耳を傾けてくれます。この懐の広さこそ、独自技術を生み出す原動力になっているのではないでしょうか。
- Y.H.
- 一方で、新しい技術は過去の検討知見から実績によって派生する、という考え方もあります。MGCは多種多様な分野の知見を持っていて、いわゆる“シーズ”が多い。そのシーズを時代や顧客のニーズと結びつければ経営資源が投入しやすくなる。経営資源が投入されれば、たくさんの実験が可能となり、独自技術が生まれやすくなります。
- N.M.
- なるほど。意見を言いやすく議論できる環境が醸成されていること、過去の知見としてシーズが豊富であること。そこから独自技術が生まれるのかもしれないね。
-
研究員が目指すべきものとは。持っているべきスタンスとは。
- K.N.
- ところで所長、せっかくなので、私たちからも質問をしていいでしょうか。
- N.M.
- どうぞ、伺いましょう(笑)
- K.N.
- ではまず私から。私たち平塚研究所の研究員がこれから取り組むべきことは何でしょうか。
- N.M.
- 研究所全体で取り組むべきこととしては、新規事業につながる「探索研究」に注力していきたいと考えている。例えばK.N.さんのマクシーブも、Y.H.さんが“ゼロ→イチ”で取り組んでくれている先端半導体向けの材料も、先輩たちが探索してきた歴史を受け継いだものだよね。
- Y.H.
- 検討に10年かかったそうですが、ようやく複数の開発品の上市が見えてきていますね。
- H.T.
- つまり…これまでの探索を新しい事業にしていく一方で、新しい探索を始めて次世代の事業につなげていかなければ、ということですね。
- N.M.
- その通りです。皆さんでアイデアを出し合って。
- Y.H.
- 次に私から。どういう取り組みがマーケットでの勝敗を分けるのでしょうか。
- N.M.
- まずは、将来のトレンドを読み、如何にMGCの技術に結びつけられるかが最も大事になる。それから、常にユーザーの視点に立って先を読み、軌道修正すること。もちろんスピードも重要。あとは、「きっとうまくいく」というイメージを持って研究に取り組むことと、「やり遂げるんだ」という執念かな。
- A.A.
- でも、どうすれば「きっとうまくいく」というイメージを持ち続けられるでしょうか。
- N.M.
- K.N.さんの言葉を借りれば“真摯に”一歩一歩、研究業務を進めることだよ。目の前にある仕事で頑張れば、その人自身の視野が広がってくる。視野が広がれば成功のイメージも持ちやすい。さっきA.A.さんも、実験の失敗は成功への第一歩と言ってたじゃない。
- H.T.
- それは研究のスペシャリストのスタンスですよね。でも私はスペシャリストを目指すべきか、製品の“出口”を学んでゼネラリストを目指すべきか、ときどき迷うことがあるんです。
- Y.H.
- 開発品を収益化していくには、技術以上にマーケティング力や対人調整力を身に付けなければ!と思うよね。
- N.M.
- 「こういうことをやってみたい」という希望は、出来るだけ叶えてあげたいと考えている。でもね、まだ入社して間もないので、今の段階で決める必要はないんだ。まずは業務経験を重ね、色々なことを吸収し、その上で決めれば良い。皆さんが今後益々活躍されることを楽しみにしています。