三菱ガス化学が描く2050年
カーボンニュートラル
の世界

三菱ガス化学は、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロに抑える「カーボンニュートラル」を目指す長期目標を定めています。化学の力でカーボンニュートラルを加速させることは、化学メーカーに期待される役割であり、当社の特色ある技術を深耕・応用する機会と捉えています。とりわけ、CO2を化学原料として有効活用するカーボンリサイクル技術やクリーンエネルギーシステムの構築に貢献することで、「地球規模での気候変動課題の解決」という、社会と分かち合える価値の創造を目指しています。

カーボンニュートラルエネルギー
システム、CO2利用への貢献

当社は、創業時からメタノールやアンモニアの製造・取り扱い・利用技術を蓄積し、研鑽してきました。その知的財産やノウハウは、CO2の回収・資源化、水素サプライチェーンの構築などへの応用・展開が期待できます。また、再生可能エネルギーのひとつとして注目が高まる地熱発電には、私たちが長年取り組んできた天然ガスの探鉱・開発技術が応用されています。
こうしたカーボンニュートラル達成のカギを握る固有技術と経験、専門人材を有している当社だからこそ、ここでお見せする脱炭素化のためのエネルギーシステム/ソリューションを、社会実装可能なレベルに高められると考えています。

  1. イラスト:メタノールエネルギー

    1メタノールエネルギー

    化学品として広い用途を持つメタノールは、常温常圧で安定した液体であるため扱いが容易で、燃焼燃料やメタノール燃料電池燃料のほか水素輸送媒体(水素キャリア)としての展開が期待されています。当社は大気中にCO2を増やさない「環境循環型メタノール」を構想しています。2021年夏にはCO2を原料として国際製品規格を満たすメタノールの製造に成功しました。メタノールの次世代技術開発と実用化を進めています。

  2. イラスト:アンモニアエネルギー

    2アンモニアエネルギー

    アンモニアは水素と大気中の窒素からつくられ、燃料としても、水素キャリアとしても、CO2を排出しない理想的なエネルギー物質です。製造時に発生したCO2を地中貯蔵(CCS)する「ブルー水素」や、再生可能エネルギーで作る「グリーン水素」を原料とすることで、カーボンニュートラルなアンモニアを得ることができます。当社は次世代のクリーンエネルギーとしての早期実現を構想しています。

  3. イラスト:CCUS(CO₂回収・貯留・活用)

    3CCUS(CO2回収・貯留・活用)

    CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization or Storage)には、大気中に排出されるCO2を「回収」して地中に「貯留」するCCS技術と、資源としての「利用」を図るCCU技術があります。当社はCO2の資源化研究のほか、2012年から国内でCCSの実証実験にも参画してきました。これらをブルー水素の製造やカーボンニュートラル発電に活かすべく取り組んでいます。

  4. イラスト:ダイレクトエアキャプチャー(DAC)

    4ダイレクトエアキャプチャー(DAC)

    DAC (Direct Air Capture)は、大気からCO2をダイレクトに回収する技術です。特殊な化学物質を用いて大気から吸着・吸収したCO2を加熱や減圧などによって捕集します。DACは、大気中のCO2を直接回収して資源化するカーボンリサイクル技術として期待されています。当社はCO2を吸着させる「特殊アミン類」の基礎研究を通じて、高効率なDAC技術への貢献を目指しています。

  5. イラスト:水素エネルギー(メタノール/アンモニア)

    5水素エネルギー
    (メタノール/アンモニア)

    燃焼させてもCO2を排出しないエネルギーとして、水素への関心が高まっています。水素を原料に作られるメタノールやアンモニアは、化学反応によって水素を取り出すことが容易なため、水素の貯蔵・輸送媒体として適しています。当社は、独自の触媒技術でメタノールから水素を製造する「MH-MDプロセス」を販売するなど、強みを活かした次世代エネルギー水素の利用技術に取り組んでいます。

  6. イラスト:LNG発電+CCUS

    6LNG発電+CCUS

    化石燃料の中でもCO2排出量が少ない天然ガスは、カーボンニュートラル達成に向けた有力な「移行エネルギー」として位置づけられます。当社は長年の天然ガスの探鉱と開発の経験を活かしてLNG発電事業に参画すると共に、発電所などから排出されるCO2を回収して地中に貯留するCCS技術や、資源化するCCU技術と組み合わせ、カーボンニュートラルを実現するエネルギーシステムへの貢献を構想しています。

  7. イラスト:地熱発電

    7地熱発電

    環太平洋火山帯に位置する日本は、世界第3位の地熱資源を有する国です。地下深部の熱(マグマ)エネルギーを利用する地熱発電は、CO2排出量が極めて少なく環境適合性に優れています。そして、化学会社として唯一、地熱発電事業を手掛けているのが当社グループです。天然ガスの探鉱と開発の両技術を本事業に活用し、技術的な優位性を確保。現在は国内3ヵ所目の発電所を建設中で、その他エリアの調査も推進しています。

  8. イラスト:MGCカーボンニュートラル工場

    8MGCカーボンニュートラル工場

    当社が描くカーボンニュートラルの世界では、工場で使用するエネルギーに水素(メタノール/アンモニア)発電や地熱発電など、カーボンニュートラルを実現するエネルギーを利用。また、大気に排出されるCO2をCCSやDACを通じて資源としてメタノールやプラスチックを始めとする様々な化学製品の製造に活用することができれば、理想的なカーボンニュートラル工場を実現することができます。

写真:梅津 僚太郎
社員に聞く

CO2を原料に、新たな化学プロセスを構築中

梅津 僚太郎
三菱ガス化学株式会社 東京研究所

私はCO2を原料に用いるポリカーボネートの新たな製造プロセスについて、フラスコを用いた研究から製造プラントの計画に至るまで、幅広い開発業務を担当しています。本テーマは産学共同で推進しており、社内外から多くの刺激を受けながら、日々の分析や検証実験を遂行しています。現在開発中の技術は、CO2の固定化だけでなく製造プロセス全体でのCO2排出量の抑制を主な目的としています。ポリカーボネートのリーディングカンパニーとして、その製造工程から排出されるCO2の削減は、地球温暖化防止に貢献できる社会的意義の大きい仕事だと感じています。さらに、ここで培った技術は各種化学品の合成や省エネルギー化にも応用が可能だと考えています。

カーボンニュートラル
貢献製品の開発

当社グループは現在、「社会と分かち合える価値の創造」というミッションのもと、社会全体の脱炭素化とエネルギー効率の改善に資する製品開発を加速させています。製品化のカギを握る当社の基盤技術は、たとえば電力の制御・変換を司るパワー半導体の高度化、モビリティ分野では車体軽量化や運転の効率化、蓄電技術の領域では次世代電池材料の性能向上などに貢献できるポテンシャルを有しています。また、2021年にはカーボンニュートラルを実現する手段のひとつとして、CO2や廃プラスチックなどをメタノールに変換し、化学品や燃料・発電用途としてリサイクルする「環境循環型メタノール構想」を発表しています。

  1. イラスト:全固体電池(EV向け)

    1全固体電池(EV向け)

    筐体の形状を自由に設定でき、高速充放電が可能な全固体電池は、電気自動車(EV)の普及を加速させる切り札と目されています。当社は大学と共同で、安全性が高く柔軟で、電極層と密着しやすい特長を持つ全固体電池向け固体電解質の開発に取り組んでいます。

  2. イラスト:燃料電池(FCV向け)

    2燃料電池(FCV向け)

    燃料電池自動車(FCV)は、車両に搭載した燃料電池で発電したエネルギーを動力にして走る自動車です。当社は「直接メタノール型燃料電池」を製品化していますが、メタノールの直接利用以外にも当社の水素利用技術のFCV市場への貢献が期待されています。

  3. イラスト:車体軽量化

    3車体軽量化

    普及拡大が期待されるEVは、搭載される電池の重量増が課題です。当社グループは、車体の軽量化に寄与するエンジニアリングプラスチックスなどに強みを持っています。さらにポリカーボネート樹脂などへ回収したCO2を利用する製造技術の開発も推進中です。

  4. イラスト:運転効率化

    4運転効率化

    スマートフォンのカメラレンズに使用される当社の光学樹脂ポリマーは、優れた光学特性から自動車の自動運転を支えるセンシングカメラなどに市場が広がっています。最適な自動運転によりエネルギー効率を高めることで、カーボンニュートラルへの貢献が期待されます。

  5. イラスト:エネルギー制御システム

    5エネルギー制御システム

    エネルギー制御システムを効率化するパワー半導体は、人々の暮らしと環境負荷の低減に欠かせないものです。当社は、高効率な半導体の生産をサポートする製品や、プリント配線板向け新規材料などの開発・製品化によって、低炭素・脱炭素社会に貢献しています。

写真:高野 翔平
社員に聞く

自然エネルギーのエースへ、地熱発電の拡大を牽引する

高野 翔平
湯沢地熱株式会社 技術部 運転・保守グループ

日本が保有する数少ない資源のうち、地熱は世界屈指のポテンシャルを誇るクリーンエネルギーです。国内で23年ぶりの大規模地熱発電所として、2019年より当社が新たに運転を開始した山葵沢地熱発電所で、私は地熱の開発・運転に従事しています。地中深くのマグマによって熱された熱水を蒸気として採取・利用することで、24時間365日・安定的に発電可能な地熱は、カーボンニュートラルの時代にふさわしいクリーンなエネルギーです。
当社は現在、国内3ヵ所で地熱発電・開発事業を行っており、今後も電源構成に占めるクリーンエネルギーの比率拡大と発電効率の改善、気候変動の緩和に貢献できるよう、本事業を発展させていきます。

「環境循環型メタノール構想」への取り組み

当社は、発電所などで排出されるCO2や廃プラスチック等をメタノールという形で再利用することで環境循環を可能とする「環境循環型メタノール構想」を掲げ、産業横断的な提携を進めることで、脱炭素社会や循環型社会の実現に貢献します。具体的には、排出CO2や多様な原料ガスからのメタノール合成技術のライセンス供与以外にも、運転・メンテナンス技術支援サービスやメタノールの製品取引といった総合的な提案を行います。排出CO2の削減や資源の再利用を基盤とした産業横断的な、あるいは官民が協力する取り組みを進め、新たな成長を促す産業構造や経済社会の変革に貢献します。

図:環境循環型メタノール構想。環境循環型メタノールの流れを示す。
図:環境循環型メタノール構想。環境循環型メタノールの流れを示す。