当社が研究開発中の生体吸収性材料を用いた研究成果が「Scientific Reports」に掲載されました

2023年3月10日

 三菱ガス化学株式会社(本社:東京都千代田区、社長:藤井 政志、以下、本社)は、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科(名古屋市昭和区)人間拡張・手の外科学の村山 敦彦 病院助教、米田 英正 助教、山本 美知郎 教授ならびに個別化医療技術開発講座の平田 仁 特任教授らの研究グループとの共同研究(以下、本共同研究)において、当社が研究開発中の生体吸収性材料を用いた研究成果が「Scientific Reports」の2023年2月25日付電子版*1に掲載されましたのでお知らせいたします。

 本共同研究はAMEDの橋渡し研究プログラム、令和3年度公募・preB、研究課題名「新規生体吸収性材料PHA を用いたモノフィラメント縫合糸の開発」として株式会社河野製作所(本社:千葉県市川市、社長:河野 淳一)も含めた3者の産学共同で実施されています。

 生体吸収性材料としてポリ乳酸やポリグリコール酸が知られていますが、手術で使用される縫合糸用途では操作性や結節安定性*2が課題とされています。一方、3-ヒドロキシブチレート(以下、3HB)と4-ヒドロキシブチレート(以下、4HB)の共重合体であるpoly(3HB-co-4HB)(以下、PHA)は微生物体内で合成され、高い生体適合性*3を持ち、生物医学工学分野で着目されていますが、実用化には至っておりません。当社では工業的製造技術の確立と製品化に向けて独自技術での研究開発を進めており、吸収性モノフィラメント縫合糸の試作段階に到達しています。

 今回、PHAからなる吸収性モノフィラメント縫合糸の試作品が既存製品にはない高い伸縮性と柔軟性を持っており、結節安定性に優れるという特徴を持っていることが分かりました。特に脆弱性のある柔らかい組織を縫合する際にその効果を発揮することが期待されます。

 今後、本共同研究では縫合糸にとどまらず、人工靭帯や人工神経などの柔軟な組織の再建用デバイスへの応用も視野に入れ実用化を目指してまいります。また当社はグループのミッション「社会と分かち合える価値の創造」に基づき、医・食分野での新しい価値の創造に向けた研究開発を進めてまいります。

 

*1 “A highly elastic absorbable monofilament suture fabricated from poly(3-hydroxybutyrate-co-4-hydroxybutyrate)”, Scientific Reports, A. Murayama et al., 13, Article number: 3275 (2023) (https://doi.org/10.1038/s41598-023-30292-w
*2 結紮部(ノット)がほどけにくい性質
*3 生体適合性 生体組織や器官と親和性があり、異物反応や拒絶反応などを生じない性質

 

<2023年4月19日 追記>

 当社が開発しているPHAの加工方法については東京大学大学院農学生命化学研究科生物材料科学専攻(東京都文京区)岩田忠久教授らの研究グループと共同研究をしております。本論文中のPHA縫合糸は、この共同研究にて考案された技術を活用しております。

以 上

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