
医薬
「たべられません」の小袋の正体は、脱酸素剤?

どら焼き、フィナンシェ、マドレーヌ、カステラなど和菓子や洋菓子問わず食品の包装内に「たべられません」と表面に記載された小さな袋が入っていますが、どのような効果があるのかご存じでしょうか?
この小袋は「鮮度保持剤」といいます。
鮮度保持剤は、食品と一緒に包装することで、食品の劣化を防ぎ、安心して美味しく食べられる期間を延ばす効果があります。
食品は、「温度」や「湿度」「光」「微生物」「酸素」等、様々な要因により変質してしまいますが、鮮度保持剤を使用することでこの変質を防止します。
この記事でわかること
鮮度保持剤の種類と効果
鮮度保持剤の効果
鮮度保持剤には主に3種類の効果があります。
- カビ・細菌などの微生物が増殖するのを抑える
- 食品のやわらかさ・しっとり感などを保つ
- 酸化による食品劣化を防ぐ
鮮度保持剤の種類
鮮度保持剤にはいくつか種類があり、求める効果によって使用する鮮度保持剤が異なります。
ここでは「乾燥剤」「アルコール蒸散剤」「脱酸素」について紹介します。
なお、「鮮度保持剤」と「保存料」は異なります。
「保存料」は、食品の腐敗や変敗の原因となる微生物の増殖を抑制し、保存性を高めるための食品添加物で、食品に混ぜ込んで使用します。
乾燥剤

乾燥剤とは、密封容器中の水分を吸い取り、乾燥状態にするものです。
乾燥剤にもいくつか種類があり、二酸化ケイ素が原料で粒状のシリカゲル、生石灰(酸化カルシウム)が原料の石灰乾燥剤や石灰を袋に閉じ込めた乾燥剤、シート状の乾燥剤などがあります。
シリカゲルと石灰乾燥剤の違いについてはこちら乾燥剤の効果
比較的水分の少ない食品の湿気を抑える
せんべい、クッキー、ラスク等の水分が少ないお菓子の「パリパリ感」や「サクサク感」などの食感を保つことができます。
主な用途
「パリパリ感」「サクサク感」のある食品に向いています。
- 洋菓子:クッキー、ラスク、キャンディーなど
- 和菓子:おせんべいなど
- その他:海苔、椎茸、乾物など
アルコール蒸散剤
アルコール蒸散剤とは、密封包装内にアルコール(エタノール)を蒸散させるものです。
アルコール蒸散剤の効果
カビの発生を抑える
初発菌を殺菌し、増殖を抑え、カビの発生も防ぎます。
食品の「やわらかさ」「しっとり感」を保つ
蒸発したアルコールが食品に吸着(バリア形成)し、食品をしっとり感のある、作りたてに近い状態に保ちます。
アルコール蒸散剤のデメリット
- 食品にアルコール特有の匂いが付着してしまう場合がある
- 開封時にアルコール特有の匂いが出る
アルコールの匂いを軽減したものもあります。
主な用途
「しっとり感」のある食品に向いています。
- 洋菓子:バウムクーヘン、マフィン、マドレーヌ、ワッフル、マカロン、ドーナツなど
- 和菓子:カステラ、甘納豆など
- その他:デニッシュ、半生ラーメン、さきいかなど
脱酸素剤(エージレス®)

脱酸素剤とは、密封包装内の酸素を吸収するものです。
脱酸素剤の効果
酸素を必要とするカビや細菌などの微生物の増殖を抑える
カビの増殖を抑えることによって、賞味期限を延ばすことができます。
酸化を抑えて、品質劣化を防ぐ

食品が酸化すると、劣化し、香りや色調が変化します。
そのため、酸素を除去して、酸化反応を防ぐことによって、食品の品質の劣化を抑え、日持ちを延長することができます。
脱酸素剤のデメリット
- 酸素を吸収した分、約20%包装袋が収縮する
- 使用できる包装フィルムが限られる(酸素が通りにくいフィルム)
- 包装フィルムに穴が開くと、効果が無くなる
主な用途
酸化劣化にお悩みの様々な食品に向いています。
- 洋菓子:バウムクーヘン、マドレーヌ、フィナンシェなど
- 和菓子:どら焼き、カステラなど
- その他:コーヒー、お茶、ドライフルーツ、ミックスナッツなど
鮮度保持剤の選び方
鮮度保持剤は、使用する食品や目的に応じて使い分ける必要があります。
乾燥剤 | アルコール蒸散剤 | 脱酸素剤 | |
---|---|---|---|
菌抑制効果 |
カビ △ 酵母 × 細菌 × |
カビ 〇 酵母 △ 細菌 △ |
カビ 〇 酵母 △ 細菌 △ |
やわらかさ・しっとり感 | × | 〇 | △ |
酸化防止効果 | × | × | 〇 |
湿気防止効果 | 〇 | × | x |
まとめ:「食べられません」の正体は、脱酸素剤や乾燥剤

どら焼き、フィナンシェ、マドレーヌ、カステラなど和菓子や洋菓子問わず食品の包装内に「たべられません」と表面に記載された小さな袋の正体は「鮮度保持剤」でした!
この記事を書いた人

三菱ガス化学(株)
脱酸素剤事業部
脱酸素剤エージレス®【公式】Twitter
脱酸素剤「エージレス®」は、鉄が酸素と反応して錆びる(=酸化する)原理を応用して、MGCが世界に先駆けて開発しました。食品・医薬・工業など様々な用途に対し、品質を守る製品の開発を積極的に進めています
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