工業
文化財保存には乾燥機能付脱酸素剤「RPシステム®」
RPシステム®とは、脱酸素剤RP剤が空気中の酸素を吸収、外界と遮るハイガスバリア袋で密封することにより無酸素状態を作り出し、文化財劣化の原因となる害虫・カビ・サビ等の発生を防ぎます。
包装内を無酸素状態(酸素濃度0.1%以下)にすることで、化学薬品を使わずに殺虫・殺菌を可能にし、文化財の長期保存を可能にします。
出土金属器、古文書、古美術、蔵書資料に適しています。
RP剤の種類
RP剤の種類について、解説します。
RP剤AEタイプ

RP剤AEタイプは、金属腐食の原因である酸素、湿分、腐食性ガスを吸収する金属製文化財用です。無酸素・無水分の状態を維持すれば、空気中で急速な劣化が進行するものも、安全に保存できます。
特に、発掘時の状態を保つことが困難な出土金属器の保存に適しており、遺物そのものに手を加える必要がないのが特徴です。
RP剤KMタイプ

RP剤KMタイプは、酸素を吸収し、若干の水蒸気を吸収します(※)。
木、紙、布、皮などの非金属系文化財用に開発された脱酸素剤です。文化財の虫害防止、カビの繁茂防止に効果があります。
※絵画など湿度変化を避けたいものを包装する場合には調質剤の併用をご検討ください。
ガスバリア袋

【ガスバリア袋の注意点】
- 「エスカル®ネオ」は、酸素、湿分及びその他のガスが非常に透過しにくいフィルムからなり、左右両端をシールしたロール状の荷姿をしています。
- 大きな対象物には原反フィルム「エスカル®ネオフィルム」をご使用下さい。
- 「エスカル®ネオ」を使用した場合の保存対象期間は約5年です。
- 1年後の保存であれば、三方シール袋「PTS袋」もご利用出来ます。
- 食品向け脱酸素包装用フィルム(EVOH、PVDC系など)は透湿性が高いので、RPシステムには適しません。
- ビニール、ポリエチレンなどのフィルムはガスバリア性が低いので、RPシステムには使えません。
ガスバリア袋の性能比較表(25℃、60%RH参考値)
適性 | 種類 | 酸素透過度 (ml/㎡・day・atm) |
水蒸気透過度 (g/㎡・day・atm) |
備考 |
---|---|---|---|---|
◎ | エスカル®︎ネオ | 0.05 | 0.01 | セラミック蒸着系透明フィルム |
○ | PTS | 0.5 | 0.08 | 同上 |
○ | アルミ(箔) | <0.01 | <0.01 | 不透明 |
△ | アルミ(蒸着) | 0.2〜6 | 0.5〜6 | 同上 |
× | EVOH系 | 0.3〜7 | 4〜7 | エパール、OVなど |
× | PVDC系 | 5〜15 | 4〜7 | ポリ塩化ビニリデンコート (KOP、Kナイロンなど) |
× | ナイロン系 | 30〜120 | 5〜15 | |
× | ポリエチレン | >2000 | 5〜15 |
酸素インジケーター

フィルムが確実に密封され、容器内が無酸素状態になったことを、色の変化で知らせる検知剤です。
酸素がある場合はブルー、酸素がない場合はピンク色になります。
酸素インジケーターは密閉初期の無酸素状態を確認するための検知剤であり、長期間色調は維持できませんのでご注意ください。陽の当たる場所や温度の高い場所に長期間放置していると色が褪せてくるようになります。
酸素インジケーターの使い方

密封方法
RPシステムは正しく密封しないと効果を発揮しません。
クリップを使用する方法とクリップシーラーで密封する方法についてそれぞれお伝えします。
ヒートシーラー(弊社商品ではございません)

【ご使用方法について】
- ハンドルを握りフィルムに熱と圧力をかけて使用します。
- 20cm以上のものは、シール部分を重ねて繋ぎます。
- 表面温度計との併用をお勧め致します。(別途ご購入ください)
エージレス®クリップ

熱シールの代わりに簡単にガスバリア袋を密封する為のクリップです。
【ご使用上の注意点】
- 使用温度範囲は室温程度です。
- 何度も繰り返し開閉していると完全密封が出来なくなる場合があります。ご使用中のフィルムを1枚(袋は2枚です。)クリップで挟み引き抜ける場合は密封が出来ておりませんので廃棄して下さい。
- ガゼット袋や背貼り袋など厚みが均一でないものは密封できません。
よくあるご質問
RP剤とハードケースのみによる保存は?
現状不可能です。
タッパーウェア等のプラスチック製のハードケースは酸素バリア性が弱いうえ、密封をした場合、RP剤による脱酸素で容器内が減圧され、蓋等が変形してエア漏れを起こす可能性があります。
その結果、脱酸素状態を維持できなくなります。
保存対象物に突起等がある場合の使い方は?
RPシステム®は完全密封が前提で機能しますので、突起部によってガスバリアフィルムにピンホール等が生じますと効果を得られません。
その対策として、トレイやエアキャップ等の樹脂製クッション材で対象物を保存してパックするようにして下さい。
発泡スチロールの使用はできません。特に、水分吸収型のRP剤ANタイプをご使用の場合は、紙型クッションの使用を避けて下さい。
紙クッション中の水分も吸収して、紙クッション自体を乾燥により劣化させてしまう恐れがあります。
桐箱やたとう紙等の併用は?
水分中立型のRP剤Kタイプであれば、使用可能です。
桐箱を使用する場合は、箱の内側と外側のそれぞれに見合うRP剤Kタイプを入れて密封して下さい。
たとう紙の場合は、対象物をたとう紙で包んで、外側にRP剤Kタイプを入れてパックして下さい。
但し、水分吸収型のRP剤AEタイプをご使用の場合、内側の湿度にご注意下さい。
区分する為に個々にポリ袋に包んだ上での使用は?
可能です。
複数の対象物を個々にポリ袋に入れてまとめてRPパックする場合、ポリ袋自体は通気性が高いので、2〜3日で各ポリ袋も無酸素状態になります。
RP剤を入れた上での脱気(真空包装)する必要性は?
必要ありません。
RP剤を封入した上で脱気を行うと、脱酸素で容器内が更に減圧して、対象物とガスバリアフィルムの内壁が過度に密接する恐れがあります。
その結果、対象物を傷めたり、フィルムにピンホールが生じる可能性があります。
RP剤は再利用・再使用できますか?
RP剤は再利用できません。
製品に関するお問い合わせ
三菱ガス化学トレーディング株式会社
機能材料本部 ライフソリューション部 生活産業グループ
TEL:03-6626-3365
- 脱酸素剤「エージレス®」
- 文化財保存には乾燥機能付脱酸素剤「RPシステム®」